弊所のクライアントに日本の伝統工芸である「名古屋黒紋付染」を手がける山勝染工様がいらっしゃいます。
日本の伝統工芸が好きな方ならご存知かもしれませんが、京都や金沢と同じように、名古屋にも着物や染めの産地があり、山勝さまもその一つで、100年の歴史があります。(詳しい歴史などはWEBサイトを見ていただければ幸いです)
「名古屋黒紋付染」の歴史、技術は大変素晴らしいものです。
この素晴らしい染めをもっともっと多くの方に知ってほしい。
しかし、そう考えるうちに、「名古屋黒紋付染」の価値を体感してもらうには、ビジュアル面での開発はもちろん、コミュニケーションの交通整備のような、道筋が必要なのではないかと最近思っています。(黒紋付の技術で現代的なアクセサリーを作る、アパレルを作る…例えばすでに顧客のついた著名なファッションブランドであれば効果が期待できます)
もしかしたら、
中核事業(コア)となる「名古屋黒紋付染」を中心にして、もう少し広い視点で捉えると、
例えば、黒紋付染を通じて「現代の人々に名古屋黒紋付の歴史、日本の文化を伝える」を中核事業と捉える事ができるかもしれません。
そうすると、入り口のタッチポイントは「日本の伝統」でなくても良いかもしれない。
伝統文化に興味はあるけど知らない、あるいは全く知らないといった層にも届けることができるのでは無いか?
企業、ビジネスの価値は何か?を問うことに似ていますが、山勝染工様においては、
・これまでのコア「名古屋黒紋付染」
・これからのコア「現代の人々に名古屋黒紋付の魅力・歴史、日本の文化を伝える」
と考えることもできそうです。(名古屋黒紋付染そのものも、もちろん素晴らしいです。)
そうすると、商品を作る以外にも、いかに染色の魅力、職人技術を体験してもらうか?どう日本の文化を伝えるか?黒紋付を作る事だけにとらわれず、顧客体験にもバリエーションが生まれる気がするのです。それも、伝統工芸という入り口に捉われず。。
「かっこよかったから使っていたアイテムが、気がついたら名古屋黒紋付染だった」
「あるサービスを利用した事がきっかけで、名古屋の黒紋付、染め職人がいる事を知った」
「名古屋の黒紋付という物らしいけど、気に入っているから使っている」
そんな入り口でも良いと思うのです。
このお仕事をしていてもよく思うのですが、作ることももちろん大事なことです。
ただ、出会い方がものすごく惜しいなと思うことが良くあります。
だからこそ、もう少し視野を広げて、目的は価値を伝えることだと、立ち返る。
そのためには、作り出す前に手を止めて考えなくてはいけない事もあるなぁと思います。
"写真は黒染めをする前に反物の不純物を取り除いている様子です。透明な水に浮かぶ真っ白な反物がとても綺麗です。染めは基本的に水を沢山使います。こんなに沢山水を使うということは、産地を支えるには近くに川が必要です。近くには名古屋城築城と所縁の深い堀川があります。"
読んでいただきありがとうございました。