2021年
8月
06日
金
弊所のクライアントに日本の伝統工芸である「名古屋黒紋付染」を手がける山勝染工様がいらっしゃいます。
日本の伝統工芸が好きな方ならご存知かもしれませんが、京都や金沢と同じように、名古屋にも着物や染めの産地があり、山勝さまもその一つで、100年の歴史があります。(詳しい歴史などはWEBサイトを見ていただければ幸いです)
「名古屋黒紋付染」の歴史、技術は大変素晴らしいものです。
この素晴らしい染めをもっともっと多くの方に知ってほしい。
しかし、そう考えるうちに、「名古屋黒紋付染」の価値を体感してもらうには、ビジュアル面での開発はもちろん、コミュニケーションの交通整備のような、道筋が必要なのではないかと最近思っています。(黒紋付の技術で現代的なアクセサリーを作る、アパレルを作る…例えばすでに顧客のついた著名なファッションブランドであれば効果が期待できます)
もしかしたら、
中核事業(コア)となる「名古屋黒紋付染」を中心にして、もう少し広い視点で捉えると、
例えば、黒紋付染を通じて「現代の人々に名古屋黒紋付の歴史、日本の文化を伝える」を中核事業と捉える事ができるかもしれません。
そうすると、入り口のタッチポイントは「日本の伝統」でなくても良いかもしれない。
伝統文化に興味はあるけど知らない、あるいは全く知らないといった層にも届けることができるのでは無いか?
企業、ビジネスの価値は何か?を問うことに似ていますが、山勝染工様においては、
・これまでのコア「名古屋黒紋付染」
・これからのコア「現代の人々に名古屋黒紋付の魅力・歴史、日本の文化を伝える」
と考えることもできそうです。(名古屋黒紋付染そのものも、もちろん素晴らしいです。)
そうすると、商品を作る以外にも、いかに染色の魅力、職人技術を体験してもらうか?どう日本の文化を伝えるか?黒紋付を作る事だけにとらわれず、顧客体験にもバリエーションが生まれる気がするのです。それも、伝統工芸という入り口に捉われず。。
「かっこよかったから使っていたアイテムが、気がついたら名古屋黒紋付染だった」
「あるサービスを利用した事がきっかけで、名古屋の黒紋付、染め職人がいる事を知った」
「名古屋の黒紋付という物らしいけど、気に入っているから使っている」
そんな入り口でも良いと思うのです。
このお仕事をしていてもよく思うのですが、作ることももちろん大事なことです。
ただ、出会い方がものすごく惜しいなと思うことが良くあります。
だからこそ、もう少し視野を広げて、目的は価値を伝えることだと、立ち返る。
そのためには、作り出す前に手を止めて考えなくてはいけない事もあるなぁと思います。
"写真は黒染めをする前に反物の不純物を取り除いている様子です。透明な水に浮かぶ真っ白な反物がとても綺麗です。染めは基本的に水を沢山使います。こんなに沢山水を使うということは、産地を支えるには近くに川が必要です。近くには名古屋城築城と所縁の深い堀川があります。"
読んでいただきありがとうございました。
2021年
7月
30日
金
普段、私たちが何かを購入したり消費する背景には、その顧客が果たすべき事「ジョブ」があるという。消費とは、ある状況下におかれた顧客が、ジョブを片付けるために特定の製品やサービスを「雇う」事である。
とある事業のために調べ物をしていたら、上記の「ジョブ理論」という言葉に出会いました。
ここではあまり詳しく書きませんが、ハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授という方が理論化したものです。
仕事柄、ターゲット、ペルソナ、ニーズ、インサイトなどのマーケティング用語に触れる機会が多く、どの言葉も製品であれサービスであれ、社会に提供する際、どんな相手に提供するのかを想定するに、役立つ手法として認知されています。
今後も様々な手法に触れていくことになると想像していますが、
この「ジョブ理論」は非常に納得しました。
分かりやすくまとめられた、とある記事を読んでみると、
ニーズに近いニュアンスだが、「ジョブ」は、ニーズのもう少し手前、
ニーズが生まれる源泉(潜在的ニーズに近い)と、捉えられているようです。
人がジョブを解決するために製品を雇う。その結果が「ニーズがある」という見方。
確かに、何か物を購入する時に解決したいジョブがあります。
「喉の渇きを潤したい」「お腹を満たしたい」「知識を得たい」「追体験したい」など、
こうしたものは普段の日常生活の中でも見ることができますし、
ターゲット、ペルソナといった、少し難しい捉え方よりも、
シンプルに、より解像度高く顧客を見ることができるのでは無いかと、個人的には思いました。
普段のデザインのお仕事でも、そうした観点は大事に考えており、
顧客はどんな状況にあり、どんなジョブを解決したいのか、
クライアントと共に、裏側から見るような視点で、
デザインを考えていきたい…。
そんなことを改めて思わせてくれました。
"写真は好きな照明の一つ「MAYDAY」です。派手な照明ではありませんが、シンプルな形状でコードが4mと長く、床に置いたり、上から吊るしたり、フックで引っ掛けたり、コードの範囲であればどこへでも光を持ち運べる照明です。MAYDAY(メーデー)とは救難信号の意味で、弊所で活躍中です。"
読んでいただきありがとうございました。
2021年
7月
12日
月
デザインはつくることだけじゃない。
デザイナーだけのものでもない。
かといって、
デザインはものづくりの仕事でもある。
デザイナーが司っている。
ただし、形を追う事だけでもない。
と思っていて、
自分はどっちなのか?どちらでも無いのか?とぐるぐる考え、結論が出たかと思えば、
ある時、また振り出しに戻るというようなことを繰り返してきました。
作ることが好きでこの世界に入ったのに、
社会に出てみると先輩に「デザインするな!」と言われてしまったり・・・
当時はわけが分からず頭を抱えました。
(今、この言葉の意味はものすごく分かりますし、若い時にこの言葉に出会えて良かったと思います。なので、僕が社会に出て実際に最初から最後まで、何かをデザインさせてもらえたのは確か26、7歳くらいでした。今、振り返ってみると、かなり遅い方だったなと思います。同期は既にバリバリとデザインしていて、正直、羨ましく思っていました。)
「デザインするな…? では、僕は何をすれば良いのか、いったい??」
同時はそう思っていました。
独立させてもらってから10年はその答えを探していた10年のように思います。
今の僕なりの答えは、
「デザインを通して提供する価値は何なのか?その風景はどんなものか?まずはそれを考えなさい。」という事。
デザインはデザイナーだけでは成立しません。製造を担当する業者さん、依頼主や最終的なエンドユーザーがいて、また使われる環境があって、初めて成立します。そうした登場人物を含めて、どんな風景を描くのか、また社会にどう影響するのかも含め、スケールの大きな仕事だと思っています。
僕たちデザイナーはおそらく、昔から絵が得意だったり、ものを作るのが好きな子どもだったことで、美術系の学校を出ている人も多く「つくること」が得意です。
そうでない人たちからすれば羨ましく思われるのかもしれません。
でも、その力がある故に、近視眼的に物事を解決していないだろうか?とも思うのです(もちろん僕も含めて)。本当に大事なものは何なのか、提供したい価値や風景はどんなものだったのか?
この本「アート・イン・ビジネス」は、ちょっと前に出版された本で購入して積読になっていました(まだ読了していません汗 遅くて良いとひらきなおってます 読むこと自体が目的では無いので)が、今日のビジネスをアートの視点で捉えていて、読み進めている途中ですが、大変興味深いです。
その中に出てくる「Soup Stock Tokyo」を始めた遠山さんという方の描いた風景がとても素晴らしいです(存じ上げていなかったわけではないのですが)。
そのコンセプトが「スープのある1日」という風景ですが、
様々な要素を繋いでいて面白いのです。
本の中で、
「たゆみないマーケティングリサーチの結果として素晴らしいスープが生まれただけではない、また、スープという外食産業界における革新的な成功事例が「スープストック」を作ったわけではない。」と書かれていますが、まさにその通りで、ニーズの予感があったところへ行き、コンセプトによって景色を作り出した、イノベーションを起こしたという事だと思います。
(簡単に書いておりますが、もちろん、立ち上げに大変なご尽力をされたことは想像に難くありません)
P.F.ドラッカーの「マネジメント」も同時に読み進めていますが、
この2冊は自分の中で同期しています。
全てのデザインがイノベーティブでなくてはならないとは思いませんが、
ものづくりのその手前の
「提供する価値は何なのか?その風景はどんなものか?」を考えること、
それが大事で、今の僕の答えなのかな?と思います。
個人的な想いの文章になってしまいましたが、
読んでいただきありがとうございました。
2021年
7月
11日
日
「好きなもの」を堂々と言えない場面ってあります。その場に同じジャンルで自分よりも「好き度合いが高い人」がいそうな場面、確実にいる場面。「好き」を追求してその物事について多くを知ることは全然良いことだと思います。でも、一方で、「比べたら度合いは低いけど好き」という立場の人も中にはきっといて(僕がそうです)その立場からすると、なんかちょっと息苦しいなとも思う時があります。量は確かに一つの指標ではあるけれども、そういう時に発想を変えて「自分なりの好きポイント」的な軸で考えて、さらに周りもそれを面白がる(腹抱えて笑うような事ではなく)、そういう社会がいいな、と思ったりします。
普段は、そのひとなりの「これ良くない?」で良いのではないか?と思っていて、しかし、量で比べてしまった時に「(すごい好きの人に比べたら多少好きの部類だけど)自分的に魅力がここ!」という言い方がその人なりにできるような、、度合いとは違った軸で言えるようにしておけないかな?と。
「好きになるのにいちいち理由はいらない」ですけどね。でも、言語化しておいても良いのではと思いました。
ちょうど、僕にもそういったものがあったので少し掘り下げてみました。
自分なりの好きを説明をするために、どうして?なんで好きなのか?をなぜなぜを繰り返すことをで掘り下げてみました。本質的思考というようです。(トヨタ式なぜなぜ分析です5回くらい繰り返すそうですね。)
1 僕はDJを見るのも、するのも好きです(現状、家の中で・・・)。
2 既存の音楽をその人(DJ)がかけることによって、また違う曲同士をかけあわせることで、新しい聞こえ方がするからです。また違う音に触れられるのも魅力です。
3 「この曲、選曲良いな!」が同じ空間でシェアされて「これ良いよね!」と共感が広がるからです。
4 音楽の持っている価値を複数人と共感できると、人と繋がっている気がするからです。
5 人と繋がることで仲良くなったり、仲間が増えるきっかけになったり、情報を共有できたり、さらに詳しい人に出会えたら、自分の興味のある音楽をさらに深く知ることができたり、興味が湧いてルーツを辿ったり、また、その人づてで世界が広がったりするからです(そのおかげでたくさんの友人に出会えました…そう考えると音楽の力はすごい)。
僕の場合、こんな感じでしょうか?
「好き=たくさん知っている」というのは、一つの側面ではあると思います。でも他人の主観に支配されず、自分の主観で良いので、自分なりに何で好きかを分かっていれば良いのだと思います。10人いたら10通りの考えがあるのと同じように、好きのポイントも人それぞれだと思いますし、同じだったとしても全然問題無いなと。量を求めると上には上がいるので、せっかく好きなことなのに、あんまり好きじゃ無いのかも?と思えてきたりしますし。
何で好きなのかを掘り下げておくと、自分のことを知るきっかけになるかもしれないし、人と繋がれる良い機会に、使えるのではないでしょうか?
繰り返しますが、好きになるのに理由はいりません。
ただ、言語化しておくと、好きな物事を他人に影響されず大事に持っておけると思うし、
自分を知るきっかけになるかもしれないし、コミュニケーションにも使えて良いのではと思います。
(それで繋がりも広がれば、自分の人生もより豊かになったり…するかも。)
読んでいただきありがとうございました。
※あくまで長尾個人の考えです。予めご了承ください。
※写真のレコードは家にあるものを適当に引っ張ってきたものです。偏ってます。
しかも左下は何故か「甲斐バンド」です。ジャケットで買いました。
2021年
7月
03日
土
相談することはとても難しいです。例えば仕事で上司から「相談してね」と言われても、仕事が出来ないと思われたくなくて、なかなか相談できない、悩みがあっても恥ずかしくて相談できない等。相談って色々あってできないものですよね。
昨今、特にビジネスでは既成概念に囚われず、変化すること・し続けることが求められていますが、僕はというと、ここ数年スタッフさんを雇うようになったのですが、僕が20代の頃、ある年配の方が経験に基づいて、こちらの意見を否定されるのが嫌で仕方なく、飛び出して独立しました。なのに、今度は自分がその年配の方の立場のようになりつつあるような言動、それに近いものを口にした記憶があります(その度にはッとするのですが)。
これまでの経験がこうだったから、これからもこうだ。という発想、心理学的には「現状維持バイアス」というものらしく、人間のような弱い種族の生存本能だそうで、相談とは、この現状維持バイアスを壊す行為と見ることができるかもしれません。(相談しないで済むならしたくないですもんね。)
今回、僕はあることで相談をさせてもらえる機会をいただき(その時点でかなり相談へのハードルは下がっているのですが)、とはいえ、変化するためには、自分の弱さ、手の届いていない部分を相手に差し出すことになるので、一体どう思われるのか?できればこのままでもいいのでは?と心の中では思っていて、今回の僕は変化を恐れている自分が居ました。最後は「まぁ…いいか」と観念したような気持ちに…この気持ちがすでに現状維持バイアスですね。兎に角、相談は進みました。
内容は割愛しますが、
相談した結果、僕の行動が変わりました。これには明確な理由があります。
相談相手が同じ空間に2人いてもらえたことです。信頼しているAさんからの紹介(ここが大事)で、相談相手となるBさんを紹介いただき、僕含めて3人での話になりました。つまり、相談の対象となる問題あるいは課題が3人で客観的な視点で「共有」されたということです。
1対1の相談だけで外れるほど、現状維持バイアスは簡単ではありませんでした。
(Aさんを力不足だと言っているのではありません。それほど、思考の傾きというのは強いということです。)
相談する側の人間は止まったコマのように、アンバランスで倒れそうで、右から紐で引っ張ってもすぐに右に傾き、左から引っ張れば左に…。左右どちらからも引っ張ることで、ようやくある位置で安定するようなイメージです。
そうなることで、客観的な視点から考えることができ、思考の傾きが抑えられます。
もちろん、僕の相談に対するアドバイスが的確だった事、AさんBさんがとても親身になって話を聞いてくださった事が前提であることは言うまでもありません。
1対1での相談で難しい場合は、3人だと良いかもしれません。メンバーは「信頼する人」「その人から紹介される相談相手」、そして「自分自身」の3名、がバイアスを外すきっかけになるかもしれませんよ。
読んでいただきありがとうございました。
2018年
5月
17日
木
もう着られないけど捨てられない洋服。皆さんはどうしていますか?
誰でもタンスの中に眠らせている洋服に心当たりがあるのではないでしょうか。
そんな洋服たちを新たに蘇らせる『COLORING(カラーリング)』というサービスをご紹介します。
『カラーリング』とはクライアントでもある山勝染工様が提供する「染め替え」の技術を使った洋服との新しい付き合い方です。衣服が汚れたらクリーニングをするように、COLORING(カラーリング)という新しいサービスを提案します。
2017年
7月
07日
金
昨年の9月に新装版としてELVIS PRESSから出版され、おかげさまで、大手書店さんからこだわりの本屋さん、大学の生協まで、いろいろなところで皆さんに読んでいただけているようです。
同じく取り扱っていただいている京都の本屋「恵文社」さん(当店上半期ベストセラーとのこと!!)でブックフェアが開催中です!
この本から派生する本を選んだブックフェア。お近くの方は是非!著者の方が参加されるトークイベントもあります!
↓
『世界をきちんとあじわう』ためのブックフェア
2017年7月1日(土)~8月下旬
at 恵文社一乗寺店 (京都市左京区一乗寺払殿町10)
営業時間:10:00 – 21:00
営業日: 年中無休(元日を除く)
http://www.keibunsha-store.com/
『世界をきちんとあじわう』ためのトークイベント
2017年8月20日(日) 14:00開場/14:30開演
at 恵文社一乗寺店 (京都市左京区一乗寺払殿町10)
入場料:1,000円+ドリンク代300円
ご予約:http://www.cottage-keibunsha.com/events/20170820/
ゲスト:細馬宏通、ホモ・サピエンスの道具研究会(山崎剛・木田歩・坂井信三)
2015年
6月
09日
火
本屋さんで過ごす日曜の朝。
以前制作をお手伝いした「世界をきちんとあじわうための本」の著者で南山大学の人類学研究グループの方々がONREADINGさんでイベントを開催されます(2回目の開催!)。日曜の朝、本屋さんでコーヒーを飲みながら"何でも無いこと"に考えをめぐらせるひとときはいかがでしょう…? 下記にて予約受付中です。
Enjoy sunday morning at the bookstore.
↓
2011年
11月
29日
火
今年、東北で起こった出来事に対し、たくさんの方が様々なアクションを起こしました。私も「何かしなければ」という意識と、「何をすれば良いか分からない」の間を行ったり来たりで、結局何も具体的に行動していませんでした。単なる「支援」という言葉でイメージ出来ない程、それほどショックな事なんだと思いました。
愛×想とは、音楽での支援を目的に、個々に活動するアーティスト6人で結成されたボーカルグループです。そのCDジャケットを制作させていただきました。お話をいただいた時、どう答えていいのかすぐにわからず、しかし無事完成し、ようやくほんの少しだけ力になる事が出来そうです。愛×想の活動はコチラからチェックできます。→http://ameblo.jp/isoproject
2011年
10月
22日
土
ウェブサイトをオープンしました。
訪問して下さった皆様、
「いいね!」して下さった皆様、
本当にありがとうございます。
今後も出来るかぎりサイト上で
お仕事をご紹介させていただければと思います。